2020.05.15

デジタル学習とアナログ学習のバランスを考える

オンライン学習

 教育におけるデジタル化に向けた大きな動きとして、令和2年度から実施されている新学習指導要領において、これまでの紙の教科書を主な教材として使用しながら、必要に応じて学習者用デジタル教科書の併用が可能になったことが挙げられます。導入のねらいには、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善や、特別な配慮を必要とする子どもたちへの学習上の支援などがあります。
 デジタル教科書は、紙の教科書とまったくの同内容であり、授業で教科書として使うことができます。ただし、義務教育における教科書は無償給付されますが、デジタル教科書はこの対象ではありません。また、デジタル教科書を作成するかどうかは、教科書会社が決めることができます。

 デジタル教科書には、下記のようなメリットがあります。

・拡大表示ができる

・書き込みや消すことが簡単にできる

・読み上げ機能やルビ表示機能がある

 

デジタル学習とアナログ学習の融合

 

 授業での活用例としては下記のようなものがあります。

・国語の授業では、物語の主人公の心情変化を読み取る学習で、デジタル教科書のマーカー機能を使って、変化の根拠となる場面には「赤」、主人公の様子には「青」で印をつけ発表する。

・算数の授業では、課題の文章や図表部分のみを拡大して表示させることで、事前に課題と見開きページにある解法に触れることを防ぎ、十分な考察活動が可能になる。

 なお、教科書内の写真から動画を再生できたり、算数の図形を動かしたりといった機能を備えているのは「デジタル教材」で、デジタル教科書ではありません。今回の改訂で制度化されたのはデジタル教科書のみです。
 デジタル教科書の導入には、タブレット端末の支給や、学校のインターネット接続の問題、教師の操作の習得など課題が多く、今回の改訂を機にデジタル教科書が一気に広がるとは言い難い状況です。
 デジタルでの学習は現状、学校よりも通信教育サービスでより使われていると考えられます。タブレットを使った学習の多くは、ゲーム感覚で取り組めるものや、課題を終えるとポイントをもらえるものなど、子どものやる気を引き出す仕組みが準備されています。漢字の書き順を動画で確認できたり、英語の発音を聞いたりチェックしてもらったりと、デジタルでの学習には多くのメリットがある一方で、漢字や筆算の練習問題で入力しづらいなどのデメリットもあります。
 紙とデジタルのどちらかのみでまかなえるということではなく、メリット・デメリットを考慮して併用することで、より充実した学習効果が期待できます。(文/学林舎編集部)