読解力、表現力をつける学習機会を
経済協力開発機構(OECD)が、昨年行った国際学習到達度調査(PISA)において、日本の読解力は3年前の8位から15位に下がっています。6年前は4位でした。(79か国・地域から義務教育修了段階の約60万人。日本は、無作為抽出された高校1年生ら6100人が受験。)
各メディアは、その理由を「本を読んでいない」「新聞を読んでいない」「多くの文章を読んでいないから表現力がない」「スマホの普及によるコミュニケーション不足」などあげています。
この読解力低下の根本には「子どもたちは、試験のための文章読解の解答(選択)を求められてきましたが、本当の意味で文章を読解(文章に寄り添い)し、設問意図を分析し、解答を表現(記述)する」という機会をほとんどといっていいほど与えられてきませんでした。そういったことに歯止めをかけようとしたのが、今、問題になっている記述式問題の件です。膨大な人数をテスト、評価するには、平等性や正当性が求められます。しかし、そもそもこういったテストを限られた期間の中で、回数を決めて実施することに限界が来ていると私は思います。あくまでも、個々の基礎学力を評価、判定するのであれば、基礎学力の評価レベルも含めて、回数、期間を例えば、中学生以上であれば何回でも受けることができて、いちばん良いスコアを大学に提出するという方法でも十分だと考えています。その上で、受け入れる大学側が求める人材のレベルを独自で評価できる論文や面接をおこなった方が、双方にとってプラスになるのではと私は考えます。既存のシステム(テスト)の上に、求めようとしている読解力、表現力を問う記述式問題を置くことは、そもそも無理だったと考えるべきです。
読解力、表現力をつける学習機会の創出
読解力とは、その時の通り読んで理解する力です。しかし、求められている読解力の中には、表現力も含められています。そうかんがえると、読解力の低下ではなく、思考力の低下と考えます。思考力とは考えるということです。具体的には、問題解決力といえます。私は教材開発の人間なので、この問題解決力は設問に答えるという場合の問題解決力です。問題を解決するためには、次の力が必要になります。
1. 読解分析力=出題者の意図の分析と問題文の読解
2. 表現記述力=解答記述力
今までの学習は、特定のテストのための受け皿しかもっていません。暗記学習を中心とした受け皿だけです。そしてその指導内容も用語や公式(解き方)の暗記が学習内容の中心になっています。しかし、そうではないと思うのです。文章を読んでいく上では「記述する」は二次的なものです。いちばん大切なのは問題をふくめて、文脈すなわち文の流れを読みとれることなのです。また、ひとつひとつの語彙の意味が分からなくても推察して、要旨・要点が把握できたらよいのです。その後で、語彙学習が意味をもってくるのです。
まさに、「学習を自己目的化」するのではなく「学習で能力アップ」するではないでしょうか。
約20年前(1998年発刊)に制作した成長する思考力GTシリーズ国語は、思考力(読解力・表現力)の基礎を身につけるために開発した教材です。近年、成長する思考力GTシリーズ国語は、要約力、読解力、表現力に特化した教材も開発しています。成長する思考力GTシリーズ国語は進級式の教材です。この機会に、教材をご覧いただき読解力、表現力をつける学習機会の創出を考えていただければと思います。(文/学林舎 北岡 響)
①文のしくみ
第1回の1ページ目は「文のしくみ」というタイトルになっています。ここでは子どもたち「格助詞のある文章」のでき方を学習します。第2回では「副助詞のある文章」を学習します。
②「一文を見て」(10級のみ)
2ページ目は「一文を見て」というタイトルがついています。子どもたちはここで、5WIHの設問文の意味理解と答え方を学習します。
③「絵を見て」
3ページ目は「絵を見て」というタイトルになっています。ここでは、まだ言葉になっていないものを書き表すという学習をします。絵を見て想起したものを文章化する学習ともいえるでしょう。
④「文章を見て」
4ページ目には「文章を見て」というタイトルがついています。ここは長文読解のページとなっています。
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