2020.07.17

求められるデジタル・ アナログのすみわけ

 新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、日本全国のほとんどの小学校、中学校、高等学校、特別支援学校では臨時休校の措置が取られ、およそ3カ月間休校が続いた地域もありました。
 こうした中で、学校や教育委員会、自治体では、休校期間中の生徒たちの学習を支援するために様々な手段を講じてきました。具体的には、教科書や紙の教材を活用した家庭学習や、学校や教育委員会が独自に作成した授業動画を活用した家庭学習、同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習などが行われました。このことから、今後はさらに教育のデジタル化が進んでいくと考えられます。

Raz-Kidsログイン画面

 

 その中心となるのが、2019年末に文部科学省から打ち出された「GIGAスクール構想」です。GIGAとはGlobal and Innovation Gateway for Allの略で、義務教育を受ける生徒のために、1人1台の学習者用パソコンと高速ネットワーク環境などを整備する計画です。当初では、「1人1台端末」を実現するための整備スケジュールを2023年としていましたが、コロナ禍の影響により、前倒しすることになりました。また、「GIGAスクール構想」では、デジタル教科書や電子黒板などのデジタルコンテンツを活用した授業や、個人の学力に合わせて提示されるAIドリルなどの先端技術を活用することが想定されるので、さらに学びの充実が進むことが考えられます。

raz-kids fレベル

 

 しかし、教育のデジタル化に利点ばかりがあるわけではなく、アナログの方が適していると考えられている教育活動もあります。その例として挙げられているのが理科実験です。これまでにも、理科の実験映像をおさめたデジタル教材がありましたが、実際に観察や実験を行うことで、生徒が見る、触れるなどの五感を生かすことの大切さを学ぶ機会が失われたり、教員がデジタル教材を使用することで、理科の観察や実験が行われなくなる可能性が懸念されていたため、アナログの部分も残されていました。

 

理科実験

 しかし、新型コロナウイルス感染症対策は、この理科実験にも影響を与えました。文部科学省は、学校の生活様式に関する指針で、理科実験を「感染症対策を講じてもなお感染リスクの高い学習活動」と定めました。このことから、今後の理科実験については、実験グループの人数を減らす、実験台上に飛沫感染を防ぐ仕切り板を設置して行うことなどの対策や、実験の様子を別教室に配信するなどの対策を講じて行っていく可能性があります。理科実験と同様に、音楽の合唱や調理実習、体育の密集運動もまた、「感染症対策を講じてもなお感染リスクの高い学習活動」に指定されています。
 今まではアナログで行うことが適切と考えられていた学習活動にも、デジタルの部分が組み込まれることが考えられます。今後の学習においては、新しい生活様式に対応して、デジタルとアナログのそれぞれの良さを組み合わせることにより、学習効果を増大させていく視点で考えていくことが大切となります。(文/学林舎編集部)