コロナによる入試出題 範囲の縮小について
新型コロナウイルスの感染拡大による長期休校の影響によって、学習の遅れが生じています。この現状をふまえて、文部科学省から各自治体に、入試の出題範囲や実施方法に関して配慮するようにとの通知が出ています。その通知では、スポーツ・文化関係の行事、資格検定が中止や延期になったことによる不利益がないようにすることや、出席日数や学習評価の記載内容、諸活動の記録が少ないことによって不利益がないようにするということに加えて、出題範囲や内容、出題方法について、必要に応じた適切な工夫をして実施することとあります。この通知を受けて、各自治体では、休校状況や学習状況など、地域の実情をふまえて、それぞれ独自の対応策を出しています。
特別措置をとる各自治体の対応は大きく二つに分類されます。まず一つ目は、出題範囲を縮小するという対応です。このような対応をとる自治体は、近畿圏では、大阪府、奈良県、京都府、滋賀県などです。また首都圏では、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県などです。二つ目は、問題を選択式にするという対応です。このような対応をとるのは、今のところ、山口県のみです。山口県のホームページによると、全ての教科において、選択問題を導入するとあります。今後、具体的にどのような形で選択問題が導入されるかなど、追加の情報が出されるかもしれません。兵庫県(推薦入学、特色選抜、特別支援学校高等部を除く)、岡山県、広島県などでは、今のところ上記のような特別な対応は行わず、例年通り、入試を実施すると判断しています。ただし、今後のコロナの感染拡大状況によって、追加の情報が出される可能性があります。このような自治体や、まだ対応が決まっていない自治体を含めて、入試に関する情報に対して常にアンテナを張り、積極的に情報を収集しておく必要があります。各自治体のホームページを定期的に確認するなどしておきましょう。
では次に、出題範囲を縮小する大阪府、奈良県、京都府、滋賀県の対応について詳しくみていきましょう。出題範囲を縮小する教科は、奈良県では数学、理科、社会の3教科ですが、それ以外の自治体では5教科全てとなります。理科において除外される出題範囲は共通していますので、最初に挙げておきます。第1分野のうち「科学技術と人間」、第2分野のうち「自然と人間」が除外されます。
では、大阪府からみていきましょう。数学では、図形分野のうち「円周角と中心角」「三平方の定理」、図形分野以外では「資料の活用」が除外されます。社会では、公民的分野の「私たちと経済」のうち「国民の生活と政府の役割」、同じく公民的分野のうち「私たちと国際社会の諸課題」が除外されます。国語では、「書写に関する事項」と漢字の一部が除外されます。英語では、「現在分詞及び過去分詞の形容詞としての用法」のうち「後置修飾」と英単語の一部が除外されます。国語の漢字と英単語では、具体的にどの漢字や英単語が除外されるのかを確認しておきましょう。
次に奈良県です。数学では、特色選抜において「三平方の定理」「標本調査」が除外されます。一般選抜では「標本調査」が除外されます。社会では、一般選抜で公民的分野のうち「私たちと国際社会の諸課題」が除外されます。また奈良県では、除外された出題範囲について、私立高校受験者の不安解消や学習の質の保障のためにオンライン授業を提供するとのことです。続いて京都府です。数学では、「三平方の定理」「標本調査」が除外されます。国語では、「書写に関する事項」が除外されます。英語では、設問において「関係代名詞」に関することは問わないとされています。ただし、本文の読み取りやリスニングの聞き取りなど、問題文中で関係代名詞が使用されることはあるので、読み取りや聞き取りは速く、正確にできるように対策をしておきましょう。最後に滋賀県です。数学では、一般選抜で「標本調査」が除外されます。ただし、特色選抜では「三平方の定理」も出題範囲から除外されるので注意しましょう。社会では、公民的分野のうち「私たちと国際社会の諸課題」が除外されます。国語では、「書写に関する事項」が除外されます。英語では、関係代名詞(主格のthat、which、whoおよび目的格のthat、whichの制限的用法)が除外されますが、京都府と同様に本文の読み取りやリスニングの聞き取りなど、問題文中で使用されることはあるので、読み取りや聞き取りの対策は怠らずにしておきましょう。
以上、近畿圏の公立高校入試の出題範囲を縮小する自治体の例をみてきましたが、今後更なる出題範囲の変更などがあるかもしれません。積極的に情報を収集して、出題範囲を常に念頭に置きつつポイントをおさえた受験対策を心がけましょう。(文/学林舎編集部)
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