語彙力をレベルアップする
□イヤにならない学習を
子どもたちが特にいやがる学習に、漢字練習、辞典や辞書を引くことがあげられます。指導者が必要不可欠だと思っていることが、子どもにとってはイヤでたまらないという典型的な例といえます。
よろこんでするといわないまでも、いやがらない学習のしかたを「指導者」は提案すべきです。「文句をいわずにしなさい」「あなたのためだから」では人生の先輩としても失格でしょう。
□なぜこうなるのか
この学習は漢字や言葉に関するものです。いわば言語系の学習に付随したものです。
ふつうの感覚でいえば、「語」の必要性がわかってから「語」を学習するというのが筋です。ところが、言語系の学習の中で「語」は特殊な位置を占めています。そこから、漢字の百字練習や、英語で辞書をAから引きはじめて覚えていくというやり方が生まれています。
「語」の必要性がわかっていないのに「語」を学習させるというスタイルがここにあります。
つまり、文章の中での「語彙」や「漢字」だけが特殊に取り上げられ一人歩きしているのです。
子どもたちは、日常生活の中で使われている言葉から、無意識のうちに相手が伝えようとしていることを推察する能力を身につけていきます。語彙力はこの能力を発達させます。「語彙や漢字」だけを覚える練習をしていたのでは、逆にこの能力を低下させます。
□必要だから覚える
推察能力を発達させるための語彙の存在は、子どもたちに「語彙学習」の必要性を感じさせます。
この必要だから覚えるというスタンスは子どもたちにとっても筋道が明確な学習方法であるはずです。
この「必要だから」は、文章読解の中から多く生まれてきます。読解の学習では、一字、一文の理解はなくてもおおよそを推察することができます。
まず、全体を読みとり、設問に答えていくという取りかかりが中核をなすからです。
しかし、学習者は学習中も、学習後も小骨がのどに突き刺さったような感じを覚えます。「あの語を無視して解答したけれど、あの語の意味は何だったのかな」というように。ここではじめて「必要」が生まれるのです。これは少なくてもイヤにならない学習になると思いますがいかがでしょうか。
□周辺学習として語彙力育成を
(1)「未知語彙ノート」
成長する思考力GTシリーズなどを学習させるとき学習者に自分にとっての未知の、あるいはあいまいにしかわかっていない語句を抜き出せノートに「何級の第何回のどれ」というようにメモさせておきます。学習後にこれについて調べ、あるいは覚えるようにします。
(2)イングリッシュ・ ボキャブラリー・ビルディング
アメリカでも語彙力を増やすことに熱心なようで色々な工夫がなされているようです。そのひとつにボキャブラリー・ビルディング(以下ボキャビル)があります。これはすでに知っている語(動詞、形容詞、名詞)を基本語として語を増やしていく方法をいいます。ボキャビルの基本は「語をつくる」ことにあります。「辞書と暗記に頼る」という方法とは逆のものです。
<例>
1)接尾辞をつける
基本語:friend(n)
friend(n)+fy → friendly(adj)
2)接頭辞をつけ加える
use(使用) → overuse(乱用)
*イングリッシュボキャブラリービルディングについて、国際語学社という出版社からでている同名の本(酒井玲子著)を参考にしました。
□ボキャビルの漢字バージョン
次のような応用が可能ではないでしょうか。
二字熟語で「安」がつくるものを探す。ひとつは先に「安」がくるもの。もうひとつは後に「安」がくるものというように。また、英語のボキャビルのように「品詞を変える」こともできるでしょう。「着く→着、到着」のようにです。
子どもたちの「調査心」「研究心」を刺激するような工夫が必要と思われます。
(文/学林舎編集部)
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