褒めて伸ばす
人間誰しも、褒められると嬉しいです。
学習指導の現場においても、同じです。
子どもたちの多くは褒められると、学習に対して意欲的になります。しかし、褒める内容、言葉が単調であったり、同じであったりすると普遍化し、褒められていると思わなくなって、逆に学習意欲が低下することもあります。企業においても、褒めて社員のやる気を高めるために、様々な方法をとっています。ただ、褒めるにも様々な工夫をしているといいます。 「〇〇さん、今月は、〇〇を売り上げてくれてありがとうございます。しかし、あなたは、たくさんのクレームを引き起こして、○○部長を謝罪に引きずり回してくれました。でも、クレームの数は、あなたがそれだけ、頑張った証拠です。これからも、がんばって下さい。」
前文は、社長が朝礼などの場で、がんばった社員を褒める時に使う言葉の一例です。褒められる社員は、社長が売上げの数字だけを見ているのではなく、内容もしっかり見てくれていることに、社員は嬉しくなります。ただ、いくつか重要なポイントがあります。褒める内容について、一歩間違えると逆に社員のやる気を低下させる言葉をこの例文では、使っています。具体的にいうと「しかし、あなたたは、たくさんのクレームを引き起こして、〇〇部長を謝罪に引きずり回してくれました。」この言葉の後の「でも、クレームの数は、あなたがそれだけ、頑張った証拠です。」この言葉がなければ、逆に褒められた社員も、それを聞いていた社員も、やる気を失います。
学習現場においても同じです。大人より敏感な子どもたちは、大人の何気ない言葉に心を痛めてしまうことがあります。そうならないためにも、「生徒の内面を知る」ということが重要になってきます。そのためには、情報を収集しなければなりません。ある塾では、入塾前の懇談はもちろんのこと、子どもの様子を見ながら、お母さんと連絡を密にとっている塾もあります。褒めて伸ばすことは、褒める内容や過程を知ることはもちろんのこと、褒める相手をどれだけ知っているのかが大切です。そのためにも、お母さんやお父さんと話し合うこと、生徒と学習以外の話をすること、学習日記などを生徒につけさせることも「生徒の内面を知る」方法のひとつです。褒めて伸ばすことは、学習指導において、核になる存在です。
褒めて伸ばすことを指導にあった形で、この機会に再検証してみてはどうでしょうか。(文/学林舎 北岡)
追記
“指標”という言葉を辞書で調べると「物事を判断したり評価したりするための目じるしとなるもの。」「物事の見当をつけるためのめじるし。」など。教育において、いや、日本社会全体において、この指標がないと感じてしまうのは私だけでしょうか。1ヶ月先のことは、考えても、3年先、10年先を考えることができない20~40代が増えています。すべての人がそうとはいえませんが、10年、20年前と比較するとその数は多いといえます。少子高齢化が最大の課題である現在の日本において、政府は具体的な“指標”をだせないまま、対処療法的な政策しかできません。経済の指標、教育の指標、福祉の指標など、各分野において、指標を打ち出せるかが大きな課題です。
文部科学省の、「心を育む」を基軸にした「読み書きそろばん・外遊び」「家庭で、生活の基本的ルールをつくる。」などは、成長段階における目標であって、指標ではありません。今の子どもたちは、大人が考えるより、慎重に大人達の様子、社会の様子を見ています。高校生は、より社会に対して距離が近い年代です。社会で自立して生活するには何が必要なのかを、真剣に模索し、情報を集め、日本の大学に進学するのではなく、海外の大学へ進学する子どもたちも少なからずいます。
私も教育現場に関わる人間として、未来を創る子どもたちに、何が必要なのかを模索しつづけています。学校の成績、テストの点数を上げるための教材は、必要かもしれません。しかし、それでは子どもたちが未来を力強く生きていくためのサポートはできません。今の子どもたちが、大人になって「学んでいて、良かった」という教材を創ること、提案することが、私の大きな課題であり、使命です。(文/学林舎 北岡)
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