2020.11.20

移行措置の素数に関して

 新学習指導要領において、2020年度の移行措置で、中学1年生の学習内容に「自然数を素数の積として表すこと」が加わりました。(弊社の数学単元別「正負の数」に追加事項として、2021年1月発行分より追加されます。)加えられた理由として、新学習指導要領には「自然数を素数の積として表すことによって、小学校算数科で学んできた整数の性質についての理解を深め、中学校での学習につなげることができるからである」とあります。
 素数とは、「1より大きい自然数で、正の約数が1とその数自身のみであるもの」と定義づけられます。小学生の範囲でわかりやすく言うと、「約数を2つしかもたない数」です。例えば、10以下の素数は、2、3、5、7で、特に「2」は最小の素数であり、ただ1つの偶数の素数です。また、素数は英語で「prime number」といい、primeには「主要な、根本的な」の意味があることから、素数の位置づけがわかると思います。
 あらゆる整数は、素数だけの積で表すことができます。例えば、24は2×2×2×3、36は2×2×3×3と表せます。この作業を素因数分解といいます。これによって、24と36の最大公約数は、2つの数に共通するものの積、2×2×3=12と求めることができます。この求め方は、下の図のように、互除法で最大公約数を求める方法と実は同じであることがわかります。

 

移行措置の素数に関して

 自然数を素数の積で表すことで、算数で学んだ約数、倍数などの性質をとらえ直すことができるのです。
 素数は無数に存在するため、最大の素数は存在しません。素数が無数に存在することは、紀元前300年頃にユークリッドという学者が証明しています。なお、2020年4月時点で知られている最大の素数は、2486万2048桁の数です。
 素数の判定を簡単にできる計算式などはないので、数が大きくなると、その数が素数かどうかを判定するのが難しくなります。例えば、西暦について素数かどうかを考えてみるとよいでしょう。今年の西暦である2020は偶数なので素数ではなく、素数の積で表すと「2×2×5×101」です。2021も素数ではなく、素数の積で表すと「43×47」になります。最近では、2017は素数となっています。このように、桁の多い数を素数の積で表すことが難しいことから、電子商取引の暗号に桁の多い素数が使われています。
 素数はその性質はとてもわかりやすいものですが、解明されていないことがたくさんあります。例えば、「11と13」や「17と19」のように、間に偶数を1個はさむ2つの素数、これを双子素数といいますが、「双子素数が無限に存在する」ことはまだ証明されていません。なお、「3、5、7」のように、3つの連続する奇数がすべて素数になるのは「3、5、7」しかなく、これは中学生でも証明できます。
 素数は、とても重要で、性質がシンプルであるにも関わらず、謎が多くあります。身の回りにある整数が素数かどうかを考えてみるだけで、何か発見ができるかもしれません。このような小さなことから数学に興味を持つことで、数学を楽しむ心につなげることが重要です。(文/学林舎編集部)