○Cross Road 111回 新型コロナウイルス 新型肺炎の感染 文/吉田 良治
今年は年明けより世界的に新型コロナウイルス・新型肺炎の感染が拡大し、日本でも春には全国的に社会活動を止める緊急事態宣言が出されました。感染の第一波は何とか収まりましたが、当初湿度や気温の高い夏には感染が収まると考えられていましたが、8月には春よりも多くの感染者が出た感染の第二波に見舞われました。そして今秋から冬に向かっている中、感染の第三波が来ています。
ウイルスは勝手に湧き出てはきません、人が運んでいるのです。ですので、できる限り感染予防に沿った生活、所謂新しい生活様式に沿った行動をすることが重要です。人が集まる機会を避けることも重要ですが、仕事や学校などでは人が集まることは避けられません。テレワークやオンライン授業などの対応もできますが、対面での活動も必要になります。また、寮や介護施設など集団で生活するケースでは、外からウイルスを持ち込まないようにすることが重要です。
私が長くかかわったスポーツ活動では飛沫や接触が避けられないケースが多く、消毒や検温だけでは感染予防として不十分です。活動に参加する場合は定期的にPCRや抗体、抗原検査を実施して、活動する者の中でウイルス陽性者がいないという保証が必要です。アメリカのプロバスケットボールNBAでは、フロリダのディズニーランドに関係者(選手、指導者、チームスタッフ、審判、リーグ運営関係者など)を完全隔離する、所謂バブルを設置し、定期的なPCR検査を実施して感染者0でリーグ戦を終了しました。
来年に延期となった東京五輪・パラリンピックを見据え、日本でも11月8日に体操の国際大会が行われ、アメリカのNBAを模範にバブルを設定して開催しました。参加した32名の選手には毎日PCR検査が実施され、その費用が数千万円となったようです。たった32人でこの金額ですので、万単位で開催されるオリンピック規模の大会になると、膨大な費用が必要になります。
今月来日されたIOC・国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長は、選手へのワクチン接種の費用はIOCで賄うことを宣言しました。効果のあるワクチンの開発が望まれます。
春はオンライン授業で対応してきた大学では、秋学期で一部対面授業を再開してきましたが、全国的に再び感染が急増し、学内での感染リスクも高まってきました。部活動ではクラスター感染の事案も増えており、部活の中止はもちろん、再び学内立ち入り禁止とオンライン授業に切り替える大学も増えています。
若者は無症状か軽症で済むといわれていますが、回復後に合併症や後遺症に苛まれるケースも少なくありません。味覚や臭覚など自覚症状があれば適切な治療もありますが、心筋炎など自覚のない後遺症もあります。この場合はMRI検査が必要ですので、自覚がないと高額な費用のかかる検査を実施していないのが現状です。ドイツのフランクフルト大学の調査では、新型コロナウイルス・新型肺炎に感染し、治癒した100名にMRI検査を実施したところ、78%から心臓に異常を発見し、60%に心筋炎の後遺症があったようです。アメリカの大学スポーツではウイルス感染者の回復後、MRI検査や数か月の経過観察が義務化されています。日本では新型コロナウイルス・新型肺炎の陰性か陽性かに関心がいきがちですが、新しい疫病である以上治癒した・陰性になったことで安心せず、より注意深く検査をしていく必要があります。(つづく)
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