オンライン学習の現状に関して
新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、2020年3月から休校措置がとられ、4月には緊急事態宣言が発出された事で、休校期間は実に3ヶ月にも及びました。
文部科学省から発表された「新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業に関連した公立学校における学習指導等の取組状況について」によると、臨時休業中の家庭学習は、教科書や紙の教材を活用した家庭学習が100%、テレビ放送を活用した家庭学習が24%、教育委員会が独自に作成した授業動画を活用した家庭学習が10%、それ以外のデジタル教科書やデジタル教材を活用した家庭学習が29%、同時双方向のオンライン指導を通じた家庭学習はわずか5%という結果でした。(複数回答あり)
文部科学省は、紙の教材だけでなくオンライン教材などを活用した学習や、双方向のオンライン指導を推奨していますが、家庭ごとにネット環境が異なるといった設備面での問題や、教員側のICTへの対応スキルの問題、オンライン化に伴う教員への負担の増大などの問題から、公立学校においては動画やデジタル教材、オンライン指導を取り入れている学校は3割程度にとどまっています。
一方、学習塾や私立学校においては、対面授業に変わって、YouTubeなどを用いた授業の動画配信やZoomなどを用いた双方向授業を行い、メールやSNSを利用した課題や質問のやりとりが行われるなど、対応の早さが目立ちました。
今回は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、学習塾を中心に急速に進んだオンライン学習の現状と今後について考えます。
オンライン学習と一口に言っても、授業の動画配信、リアルタイムでの双方向動画授業、AIを活用した学習ツールの活用など多岐に渡ります。これらのオンライン学習はマルチデバイス対応であるため、いつでも・どこからでも同じ授業・学習が受けられます。また、移動による時間のロスがなくなり、保護者の送迎の負担が軽減されます。部活や学校生活など自分の予定に合わせて授業を受けることができ、繰り返し視聴が可能であることから、生徒の学習理解の促進が期待できるなど、生徒側のメリットは数多くあります。一方、塾側にとっても、遠隔エリアから生徒を獲得することが可能となり、少子化が進む現代において大きなメリットがあります。さらに、対面授業と併用することで、欠席時の補講への活用や家庭での復習としての活用も可能となり、オンライン学習ツールの提供は他塾との差別化をはかる上でも大きな役割を果たしています。
現在のところ、塾業界よりも大きく出遅れている公立学校のオンライン学習ですが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2019年12月に文部科学省から発表された、小学校・中学校の児童生徒に1人1台の端末と、すべての学校に高速大容量の通信ネットワークを整備するGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想が前倒しになり、令和5年度までにすべての小中学校の児童生徒に1人1台の端末が配布される予定となっています。
新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない現状においては、「with コロナ」を前提として学びを保障する必要があります。そこで、ICTを活用して対面授業とオンライン授業を組み合わせる「新しい教育様式」の実践、オンラインを含む家庭学習を授業と同様に評価することを明確化することなどが、中央教育審議会で議論されています。
そして、コロナ終息後の「ポストコロナ」における新しい学びの形として、
①離れた学校の児童生徒同士が交流する遠隔交流学習や、他校の教室とつないで継続的に合同で授業を行う遠隔合同授業などを通じて、多様な人々とのつながりを実現する。
②ALT(外国語指導助手)とつないだ遠隔学習によって、ネイティブな発音にふれたり、外国語で会話する機会の拡大・充実をはかる。博物館や大学、企業などの外部人材などの専門家とつないだ遠隔学習によって、専門的な知識にふれ、学習の幅を広げる。
③外国にルーツをもつ児童生徒や不登校、入院中や病気療養中の児童生徒など個々の状況に応じた遠隔教育を行うこと。
などが提案されています。
ICTを活用した効果的な指導を行うための教員の研修や、ICT支援員の配置など制度面での課題はまだ多くありますが、今後は、教育のオンライン化がさらに進み、対面授業とオンラインによる遠隔学習を併用したハイブリッド型の学びが加速していくものと考えられます。(文/学林舎編集部)
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