○Cross Road 113回 コロナ禍でもできることをする 文/吉田 良治
昨年は新型コロナウイルス・新型肺炎との戦いの一年でしたが、年が明けてもウイルス感染を抑え込めていない現状、一定程度の社会生活の制約を受けつつ、できる限り感染予防に努めながら、新しい生活様式の実践の継続が求められます。
私が長くかかわってきたスポーツ界は、一定のクラスター感染を出しながら冬の競技大会が進められてきました。しかし、飛沫や接触が避けられないケースが多く、この年末からの新規感染者急増を受けた緊急事態宣言の発令されたことを考えると、一般社会で制約を受けた生活が強いられ、医療機関に大きな負担となっている現状、スポーツ界で大規模クラスターを出しながら活動を続けることは難しくなっています。昨年春の緊急事態宣言同様スポーツ活動を止める時期に来ていると感じます。今年東京五輪・パラリンピックが開催される日本において、一定程度の感染者が出ても、できる限りクラスター感染に発展させない、という明確な方向性が必要です。
日本のスポーツ界のコロナ対策の模範として、アメリカのスポーツ界の取り組みがあります。世界最大の感染者数を出しているアメリカでは、一定の感染者を出しながらも厳格な医療プロトコルにより、昨年夏からプロスポーツと大学のフットボールなど一部の競技を再開してきました。プロバスケットボールNBAのように、関係者をフロリダのディズニーランドに完全隔離する、所謂バブルを作って毎日PCR検査を実施し、関係者の中に感染者がいない、という保証を持って昨シーズンを乗り切ったのは例外として、一定程度の感染者が出ても爆発的なクラスターを抑制しながら、中止をすることなくそれぞれの競技を継続してきました。頻繫にPCR検査を実施するということは、費用的な問題もありますが、競技活動に参加するものの健康だけでなく、医療機関への負担を無くす、制限を受けた一般社会への配慮を示す、という意味で、できる限りの感染予防・安全対策と、明確な医療プロトコルによる運営体制の構築が求められます。
アメリカではフットボール以外の大学スポーツでは、バスケットボール以外まだ再開がされていません。約1年近く活動が止まった中、多くの学生アスリートたちは目標を失ったままですが、一つ明るい兆しとしては、アスリートの前に学生としての責務を全うしていることです。私が以前フットボールチームでアシスタントコーチをしたワシントン大学では、この秋学期の学業成績が体育局(22競技581人)全体でGPA3.42、チーム最高が女子体操チームのGPA3.78でした。22チーム中20チームがGPA3.0以上で、10チーム(女子バスケットボール、女子ビーチバレーボール、女子クロスカントリー、女子ゴルフ、女子体操、男子サッカー、女子サッカー、女子テニス、女子陸上、女子室内陸上)224人が学業優秀リスト入り(GPA3.5以上)し、476人(全学生アスリートの82%)がGPA3.0以上、25人がGPA4.0(満点)を獲得しました。ワシントン大学はイギリス・タイムズ誌の世界大学ランキング29位(東京大学は36位)で、この高い教育レベルで一般学生よりも良い学業成績を修めるものが多く在籍しています。
昨年、朝日新聞のインターネットニュースのWithnewsで取り上げられた、ワシントン大学女子テニスチームに在籍する荒川夏帆さんは、コロナ禍の昨年春学期満点のGPA4.0で、昨シーズン全米ランキング選手を破り、全米大学女子テニス週間MVPを獲得しました。春シーズン途中で中止となって以降も、学業でやるべきことに集中し、見事世界最高水準の文武両道を達成しました。コロナ禍で目標が見えなくなりがちですが、視野を広げて今すべきことにフォーカスし取り組むことは、元に戻った後必ず活かされます。(つづく)
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