○Cross Road 117回 アメリカはコロナ禍 2度目の卒業シーズン 文/吉田 良治
秋入学のアメリカの大学ではそろそろ卒業シーズンにはいります。多くは6月初旬にピークとなりますが、ジョージア工科大学は5月7,8日(現地時間)に大学と大学院の学生合わせて4,435人が社会へ旅立ちました。ジョージア工科大学ではこれまで室内のバスケットボールアリーナが卒業式会場でしたが、昨年新型コロナウイルス・新型肺炎の感染が拡大し、昨年の卒業式は中止となり、コロナ禍2年目となる今年は感染防止の観点で、野外のフットボールスタジアムが卒業式会場となりました。
アメリカの大学の多くは感染防止で1年前からオンライン授業を実施しました。定期的にPCR検査を実施して、一部の大学では教室での対面授業を再開しましたが、大学によっては一つの大学で数千名のクラスター感染が全米中で発生するなど、中々全面的な教室での対面授業ができない状況でした。若者の多くは軽症か無症状というのはアメリカも同じですが、比較的年齢が高い大学教員の命を守る、ということも重要でした。昨年末からワクチン接種が広がってきて、今年は秋学期から教室での対面授業が実施されそうですが、対面授業再開の条件には当然ワクチン接種が義務化されます。ワクチンが普及されると、これまで制限があった様々な活動をはじめ、コロナ前の日常に近づいていきます。ただし、ワクチンは完全に感染を防ぐものではなく、少数ではあっても感染するケースがあるので、コロナ禍で広がった新しい様式に則った生活は、できる限り継続されることが必要となります。
コロナ禍でアメリカの大学生が大きな影響を受けたのは、授業の次が恐らくインターンシップではないでしょうか。企業もコロナ禍でテレワークが求められ、IT系企業などは今回のコロナ禍で、希望者には永久にテレワークを認めるケースも出ています。このような状況では大学生が企業でインターンシップを受けることも難しい状況でした。
アメリカではジョブ型雇用が一般的で、新卒者でも日本でいう中途採用と同様、募集される職種の職務経験が必要です。日本では企業が大学生を新卒一括採用で雇用し、職歴や職能がなくても、給料を支払い一から手取り足取り仕事を教えることが一般的でした。早ければ3年生の後半から就活をし、卒業の1年近く前に内定を得ることも珍しくありません。一方アメリカでは卒業時点で就職先が決まっている大学生はほとんどいません。多くは卒業後に募集のある職業にエントリーし、採用されれば1週間後には職場で即戦力として働き始めます。プロ野球で例えるとチームが補強したいポジションで、即戦力でプレーできるものをドラフト指名するのと同じです。野球をしたこともないものに、年俸を支払い野球を一から教えてもらうような、日本型新卒採用は絶対にありえません。ですので、学生時代にインターンシップを活用して、実践の現場で職能を高めていくことにより、履歴書で正式な職歴として認められるのです。場合によっては新卒即マネージャークラスの管理職で採用されることも珍しくなく、IT関連ではコンピューターサイエンスの学位があれば、新卒でも初年度年俸10万ドルが当たり前になっています。
日本でも経団連が新卒採用でジョブ型雇用を推奨し始めました。NECなどIT関連の企業では新卒初年度年俸1,000万円を掲げる企業も出始めました。コロナ禍で制限を受けて右往左往するのではなく、新しい時代に合った職場環境に適応するために、短い4年間の大学生活でしっかり準備をすることが重要となります。 (つづく)
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