デジタルとアナログ-北岡のつぶやき
親(大人)は子どもに対して、希望を託します。その希望を子どもはどう感じているのでしょうか。半分半分の気持ちが入り混じっているのではないでしょうか。あえて、その内容はここではいいません。私はこの学林舎という仕事を25年つづけていますが、様々な先生(指導者)方、親御さん、子どもたちに出会ってきました。そういった中で、様々な課題とも出会い、その課題と今も向きあっています。
私たちは昨年からコロナという課題に直面して右往左往しながら、日々をつみかさね、どう対処したらいいのかを考えながら前に進んでいます。子どもたちにとっては、様々な対人活動が制限される中、デジタル学習を活用しています。そのことによって、子どもたちには自立学習を求められています。自分で考え、学習していく。しかし、幼稚園児、小学校低学年にとっては難しい課題です。手本となる、学習者がそばにいれば見よう見まねでも自立学習がどういうものかを実感できますが・・・。
自立学習に関しては、自律学習という考え方をされる指導者の方も少なくありません。言葉の通り、自分を律して学ということですが、子どもはさておき、大人は自立(自律)して仕事をしているのでしょうか。自分自身を客観的に見ると「自立しているかもしれないが、自律はしていない」と。組織の中で仕事をしているのであれば、自立ではなく自律を求められるので、私のようなタイプは出る釘なのでトントン叩かれるはずです。しかし、企業も副業などを認め、自律ではなく、自立を求め始めています。ひと昔のように終身雇用という土台が民間では崩れ、早期退職をせまられる状況が増加しています。その背景には、日本が抱える一番の課題である少子高齢化が関係しています。今までの消費世代が年を重ねることによって、消費の質や内容が大きく変化しているからです。教育業界でいえば、大手企業が10年ほど前から介護事業に着手して、ここ数年、介護事業が大きく成長して、教育事業から介護事業が中心になっているケースも少なくありません。
そのため、教育事業に関しては紙ベースの教材からデジタルベースへの教材が拡大しています。出版社というレベルで言えば、紙ベースではなくなることによって、在庫などのコストを削減、発送業務などの削減ができ、そのコストをデジタル開発にという流れが主流になりつつあります。コロナによって、その流れは一層、加速化することになります。
私は、デジタルの流れを否定はしません。現に英語の多読学習に関しては、Raz-Kidsというデジタル多読教材を推奨しています。日本語でも同じようなシステムがあれば良いのにと思うくらいです。ただ、デジタルにも大きな課題がありますし、日本の場合、テストなどがまだアナログです。テストのときにひとりひとりに専用のタブレットが渡され、テストされる時代が来れば、アナログの時代はひとつの終わりを告げたといえます。
学習効果に関しては、どうでしょうか?デジタル時代になれば、学習効果という定義も変わるかもしれません。記憶している、記憶していないということは学習効果の定義ではなく、問題、課題に関して、自分はどう考え、表現できるのかが学習効果、評価の対象になるのではと考えています。膨大なデジタル情報を記憶している、記憶していないは価値や意味はなく、正しい情報を調べることができるかが記憶している、していないの新しい形になると私は考えます。
では、表現を獲得できるデジタル教材は存在しているのか?という問いに、デジタルでは個々の表現を育てることは難しいと考えています。一般的な表現力を獲得できても、ひとりひとり違う個性にそった表現力を育てるには、体験の経験化が必要です。つまり、アナログが必要です。例えば、動物の鹿を学習素材と考えたときに、人がつくったデジタル映像、デジタル資料を何万回見ても、人が加工した予定調和の範囲でしか表現は出てこないです。実際に見て、触れて、臭いをかいで五感を通して感じることによって、鹿という動物がどういう動物なのかを理解することができます。その経験を通じて、個々の表現がてくると私は思います。それは、科目学習も同じであると私は考えています。物語にでてくる、季節や風景などを実際に感じることによって、表現力は深みを増すと考えています。
デジタルはツールであって、そこに全てが集約されるものではないと私は思いますし、アナログは手間がかかるかもしれませんが、その時間は喜怒哀楽がこめられた人としての時間であると私は思います。 古臭いかもしれませんが・・・・・。(文/学林舎 北岡)
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