2021.06.14

国語を考えてみる-作文について

表現力を育てる

 

 中学入試や高校入試などで、作文を書く課題が多く出されています。ところが、子どもたちの多くは、作文を書くことが苦手です。それは、与えられたテーマにそって、何を書けばよいかがわからないからです。たとえ、書くことがわかっても、説明ばかりに終始した作文では、おもしろみがなくて、採点者から高い評価を得ることができません。何よりも大切なのは、その作文に個性が感じられるかということです。例をあげてみましょう。

 

「日本の文化について、考えることを作文せよ」という課題が出たとします。AくんとBくんは、ともに、日本の伝統的な遊びである「けん玉」をテーマに作文を書くことにしました。

 

なぜ?表現力なのか

Aくん
 日本の文化の一つとして、昔からある「伝統的な遊び」があります。けん玉はその一つです。
けん玉は、十字状の「けん」と、あなの空いた「玉」がひもで結びついた形をしています。「けん」も「玉」も木でできているものが多いようです。「けん」には、大皿、中皿、小皿の三つの皿の部分と、けん先の部分があって、皿に玉を乗せたり、けん先に玉をつきさしたりして遊びます。ぼくも何度かやったことがありますが、皿にのせるのはなんとかできても、けん先につきさすのはかなりむずかしかったです。けん玉をやるには、集中力が必要だと思います。
 昔からある伝統的な遊びはとてもいいものだと思います。けん玉のような日本の文化をしっかりと守って、受けついでいく必要があると思います。

 

 

なぜ?表現力なのか

Bくん
 ぼくは、先月、お年寄りとの交流会に行きました。そこで、お年寄りからいろいろな昔の遊びを教えてもらったのですが、中でも「けん玉」がいちばんおもしろいと思いました。
 ぼくにけん玉を教えてくれたおじいさんは、会ったときは足こしがふらふらしていたので、だいじょうぶかなと思いました。ところが、けん玉を手にしたとたん、体がしゃきっとして、顔つきまでが変わったのでびっくりしました。おじいさんは、玉を大皿、中皿、小皿と順番に、ひょいひょい乗せて、最後にけん先にグサッとつきさしました。あまりに上手だったので、まわりから一せいにはく手が起こりました。おじいさんは、「さあ、やってごらん」と言って、ぼくにけん玉をわたしました。やってみると、なかなか大変で、大皿の上にさえうまく乗りません。おじいさんから、「ひざを使うんだよ」とアドバイスを受けて、何度も何度も試しました。そして、とうとう、大皿に玉が乗ったときには、うれしくて飛び上がりそうになりました。
 これからも、けん玉のような伝統的な遊びを覚える機会がもてればうれしいです。ありがとう、おじいさん。

 

 

 さて、上の二つの作文を見比べると、Aくんの作文は、文章自体は上手ですが、説明ばかりが目立ち、読み終わったあとに、あまり心に残るものがありません。それに比べてBくんの作文は、おじいさんの格好よさが目に見えてくる上に、Bくんの一生懸命さが伝わってきますね。Bくんのように、体験したことを、いきいきと描くことによって、印象深い作文を書くことができます。作文で何よりも大切なのは、書いた本人にしか書けない文章、つまりオリジナリティにあふれる文章を書くことです。
 作文を指導される場合には、三つの段落に分けて書くことから始めさせてください。まず、序論にあたる導入部分で、これから書こうとするテーマを紹介させます。次に、本論にあたる部分です。ここにオリジナリティにあふれた体験談を書かせます。結論にあたる部分は、体験から学んだことや、これからの決意などにふれさせればよいでしょう。結論の部分で、「これからは、たくさんの日本文化にふれる機会をつくり、多くのことを学んでいきたいと思います」など、前向きな結び方をすれば、読む人によい印象をあたえるということも教えてあげてください。
 子どもたちに「作文は難しいもの」という先入観をなくさせて、楽しい作文指導を行ってください。(文/学林舎)