コロナの今だから考えたい「教養」
コロナによって、私たち大人は「教養」とは、一体何かを考えることを子どもたちから差し迫られているように私は思います。
教養を考えていく上で、いくつかのテーマに区切ってみたいと思います。
1.教養の崩壊
教養を国語辞典などで調べると「教え育てること」「学問を通して得られる創造力や心の豊かさの理解」「社会生活における文化的知識」などが記されている。教養の意味を考えて、今の社会を見渡すと教養という壁はあきらかに崩壊しています。教養の壁を壊したのはコロナでしょうか?私はコロナによってではなく、拡大しつづける“情報”であるとかんがえています。約25年前、パソコン・携帯が普及し始め、インターネットの世界が誕生、拡大しつづけることによって、教養という名で規制されていた情報は、いとも簡単に流れ出し、世代を問わずに情報を受け入れることが可能になりました。この拡大しつづける情報を文化的知識と考えるのであれば、これもひとつの教養なのかもしれません。しかし、拡大しつづける情報に関して、私も含めて多くの人々は抑制できていないのも事実です。つまり、拡大しつづける情報に対して、自分自身の教養を超えてしまっているのではないでしょうか。
2.つながりから生まれた教養
崩壊、超えてしまった自分自身の教養を考えていく上で、教養とは一体何であるのか、なぜ必要なのか?シンプルに突きつめていくと、教養は人間関係を構築、継続していく上でのモノサシです。自分の幼少期を振り返れば、様々な人々の教養にふれ、体験、経験化することによって、自分が生きていく“場”を構築してきました。学校や学習塾の“場”で見れば、先生の教養によって成立していました。家であれば、親兄弟の教養によって、自分の教養は積み重ねられてきました。人とつながればつながるほど自分の教養=心が豊かになっていくことが過去を振り返ると実感できます。
現在はどうでしょうか?人と人とのつながりの形態、知識の伝 達 が 世 代 間 に よ っ て 変 わ っ て し ま い 、 世 代 間 で そ のギャップを埋めきれていないことによって、現在の様々な状況を生みだしているように思います。
3.新たな教養を構築していくには
新たな教養を構築していく上で問題は何でしょうか?やはり“拡大しつづける情報”に対してどう向き合うかが焦点になると私は思います。ひとつは情報の遮断をおこなう。“情報断食”という言葉があるように、日々、浴びつづけている情報を一旦遮断、断食することによって、情報との向き合い方を考える必要があります。ただ、現在の状況を考えるとこの遮断や断食は困難を極めます。携帯電話、パソコン、TVなどの情報は日常化しています。ないと不安を感じる人も少なくありません。それこそ、人里離れた山奥、電波の届かない離島に行くしか遮断はできないかもしれません。
しかし、この遮断、断食をすることによって、人としての教養、自分自身の教養を再構築できるのではないでしょうか。情報を遮断、断食することによって、時間を捻出できることがわかると思います。時間を捻出できることによって、何が自分に必要なのか、どう時間を使うのか、消費していくだけの時間から、考える時間をもつことによって、失われた教養、新たな教養を創出できる機会を得ることができるのではないでしょうか。
その上で、自分に何が必要で、何を学ばなければいけないのかを発見することが“接続過剰”“拡大しつづける情報”に対しても自分自身の教養を見失わず、前に進める手段ではないでしょうか。
私が関わる教育という分野においても指導する側、される側の垣根を超えて“思考”し、共に創り、育っていかなければ未来を切り拓いてはいけません。(文/学林舎 北岡)
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