中学受験を考える
中学受験の季節が3カ月後に迫る中、進学・受験塾の動きは活発化します。先生、生徒の表情にも緊張感が漂います。
中学受験という言葉は、団塊の世代(第一次ベビーブーム)が小学生の頃から、始まったといわれています。それから、60年近くこの中学受験は、賛否両論を受けながら現在にいたっています。少子化が進む中、「中学受験」の意味や位置づけをこの機会に、もう一度、考えたいと思います。
〇親の思い、子の思い、そして環境
中学受験の根幹には、何があるのでしょうか? 単純に考えれば「良い中学校に進学すれば、良い高校、大学に進学できて、良い会社に就職できて、安定・安心の生活がおくれる。」この思考が根幹にあります。60年前も現在も、日本社会を見ると高校卒業と大学卒業の給与が違うことは、事実です。こういう現実を親は、自分の経験から学び、自分の子どもには良い大学に行ってほしいという思いが強くなりました。そのため、中学受験を我が子にすすめてきた経緯があります。子どももそんな親の思いを感じて、そして親の期待に応えるために中学受験という競争の渦の中に飛び込んできました。しかし、60年という時代の流れの中で、中学受験による様々な弊害がでてきたのも事実です。世代が替わり、中学受験を経験した親が子育てをする状況の中、中学受験が、子どもの成長段階に悪いという考えをもった親や指導者があらわれ、中学受験を否定する動きも増えてきました。
しかし、ここ数年、公立学校の学力格差や指導のバラツキによる不安から、今まで受験を考えなかった親子が受験を考えるようになってきています。中学受験に関しては、賛否両論はありますが、今までの将来不安を考えた中学受験から、その子供や家庭環境にあった学校選択による中学受験が活発化していることは事実です。
〇先取り学習って悪いの?
学林舎は、先取り学習に関して、30年以上、推進してきました。中学受験を専門とする塾も先取り学習をおこないます。学林舎の場合、「学びたい」という意欲を指導する側が一方的にコントロールすることは、逆に学習意欲を低下させる原因にもなると考えています。そのため、学林舎の教材の多くは「自立学習」「思考学習」ができるように作成され、学年に関係なく、学習が進めれるように考えられています。中学受験を専門とする塾の多くは、先取り学習をすることにより早い段階から受験対策ができるようにすることが最大の目的です。位置づけは違いますが、先取り学習です。この先取り学習に関して、「学習を深く学習できない」「学校の授業に意欲的に取り組めない」「暗記型の思考になる」などの様々な否定的な意見はあります。先取り学習の結果として、このような考えをもってしまう子どももいます。しかし、指導によっては、深く学習する習慣を身につけたり、意欲的に取り組む子どもたちが多いのも事実です。先取り学習は、指導する側がその意味や位置づけを学習者に論理的に説明することによって、解決できると考えています。また、ここ数年の中学受験問題を見ると暗記型の知識習得だけでは対応できない問題が中心です。より深く、思考する学習習慣を身につけないと対応できません。
中学受験というひとつのハードルを超えることで成長する子どももいますし、逆に成長を低下させる子どももいます。それを見分けることができるのは、指導する側は、もちろんのこと、生活を共にしている、親が理解しなければいけません。そして、子ども自身が当事者意識をもって、このことに対して考えることのできる“素地”をつくることが教育現場の大きな課題といえます。(文/学林舎 北岡)
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