学習教育の行き先 通信制教育の行く先
2016 年4 月1 日に、学校法人角川ドワンゴ学園が通信制の高校である「N 高等学校」が開校して6年。しばしばメディアでも取り上げられ、話題となっています。
<N 高等学校とは>
全日制・定時制と並ぶ通信制の教育課程を持つ高校です。生徒は、おのおのスマートフォンやパソコンなどを利用し、勉強したいときにインターネット上で動画を再生して授業を受けます。生徒一人ひとりが自分のペースで学習し、高校卒業資格を取得することができます。
おもな特徴には以下が挙げられます。
①高校卒業に必要な単位の取得以外に、大学進学を目的とした有名予備校講師による授業を受講することができる。
②角川が提携しているドワンゴ(ニコニコ動画を配信している会社)のプログラマーから、プログラミングを専門的に学ぶことができたり、小説、コミック、イラストなどのエンタテインメントについて学んだりすることもできる。
③様々な地域で職業体験をすることができる。
このようにN 高等学校では、インターネットを使った高レベルの授業を受けることができることに加え、大学進学や、将来の職業を見据えた学習を、自分のペースで進めることができます。そのため、②のような自分が興味を持っている専門分野を学ぶために、N 高等学校進学を選ぶ生徒もいます。
<日本での通信制教育の現状>
一昔前までは、義務教育を終えると同時に就職する人も少なくありませんでした。しかし、現代では、せめて高校は卒業しておかなければ、就職などの面で不自由になるという考えが大半となっています。
けれども、様々な事情により、高校に通うことが困難な子どもたちもいます。たとえば、小学校や中学校時代に、いじめや、学校になじめないなどの理由で不登校になり、高校進学をためらったり諦めてしまったりするケースです。また、進学校に進学したものの、異常なほどの競争を強いられたり、人と比べられ卑下されることに耐えられなくなったりして、人間不信に陥ってしまう子どもたちもいるようです。
このように、一度学校という集団社会に自分を置くことが怖くなってしまった子どもたちにとって、自分のペースで学べて、必要以上に他人と関わることを強制されない通信制教育は、非常に価値があるものであるといえます。
<アメリカの通信制教育の状況>
アメリカの通信制教育の制度が日本の制度と大きく異なるところは、日本で義務化されている「スクーリング」が一切ないところです。
また、アメリカで通信制教育を選択する場合は、「学校に通えないから」という理由よりも、「より良い教育を求めていたり」、学校へ通わずに家庭で学習を行う「ホームスクーリング」を望んでいたりすることが多いようです。ホームスクールで学ぶ子どもたちは、コミュニティー活動や青年活動などに積極的に取り組んでいることが多く、また、家庭の収入差や親の学歴に関わらず、学力テストのスコアが高いという結果が出ています。
このようなことから、アメリカでは、日本とは異なる理由で通信制の教育が注目を集めているようです。
<日本で拡大するのか?!通信制教育>
日本とアメリカでは通信制の学校を選ぶ理由が異なっています。また、日本では、アメリカのようなホームスクーリングはあまり知られていません。アメリカは義務教育の段階から、全ての州で法的にホームスクーリングが認められているので、学校に通わず、家庭で学習することに違和感を持つ人が少ないと思われますが、日本では義務教育課程でのホームスクーリングは認められていないため、家庭での学習はまだ浸透していないのが現状です。
日本でN 高等学校のような通信制の学校が拡大していくかどうかは、アメリカでホームスクーリングが選ばれる理由と同様に「より良い教育」を求めるかどうかなのかもしれません。N 高等学校の特徴がもっと知られるようになり、学び方や学ぶ内容が多様になれば、今後、日本でも通信制の学校にさらに注目が集まるのではないでしょうか。(文/学林舎編集部)
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