2024.06.18

数学的な表現力が求められるグローバル社会

徒弟制度

 

表現力育成は、今後の学習教育において非常に重要なキーワードとなります。表現力を育てることは、学習現場において大きな課題となっています。特に数学(算数)を学習していく中で、表現力を身につけることは、どのような意味を持つのでしょうか?

数学(算数)は、一見すると計算や問題解決が主体の科目と思われがちですが、実は表現力が求められる場面が多く存在します。数学の問題を解く際には、問題文を正確に理解し、適切に数式や図形を用いて解答を表現する必要があります。このような表現力を身につけることで、数学の理解を深めるだけでなく、他の科目や日常生活においても役立つ能力を養うことができます。

具体的には、数学の表現力を育てるためには以下のような方法があります。

1.問題文を正確に理解することが重要です。数学の問題文は専門的な表現や記号が多く使われているため、それらを正しく解釈する能力が求められます。問題文を読む際には、キーワードや条件を見逃さずに把握し、問題の本質を把握することが大切です。また、文章の意味を正確に理解するために、日常的に読解力を鍛えることも有効です。

2.数式や図形を用いて解答を表現する能力を磨きましょう。数学では、問題を解くために数式や図形を使いますが、それらを正確に描くことや適切に使いこなすことは容易ではありません。数式や図形を使って解答を表現する際には、自分の考えを相手に伝えるために必要な情報を適切に表現することが求められます。そのためには、数式や図形の書き方や使い方を熟知し、的確な表現ができるようになることが重要です。

3.自分の解答を適切に説明する能力も重要です。数学の解答は単に数式や図形だけでなく、その背後にある論理や思考過程を説明することも求められます。自分の解答を他の人にわかりやすく説明するためには、論理的思考力や説明力を養う必要があります。自分の解答を客観的に見直し、他の人に理解してもらえるような説明をすることで、自分の表現力を高めることができます。

 

表現力を身につけることは、数学のみならず、他の科目や日常生活においても非常に重要なスキルです。数学を学習する中で表現力を育てることは、論理的思考力や説明力を養い、さまざまな場面で自信を持って自分の意見や考えを表現することができるようになる一歩となるでしょう。数学の学習において表現力を意識し、積極的に取り組んでいくことが大切です。

 

成長する思考力GTシリーズ

 

広島大学名誉教授である岡田褘雄先生は、数学的な表現力について考察し、その基盤となる3つの力について述べています。まず、式を読む力です。式は数学の言語であり、それを正確に理解し解釈することが重要です。式に含まれる数や記号の意味を理解し、その関係性を読み取る能力が必要です。次に、式で表す力です。数学的な概念や関係性を式として表現することは、数学的な思考力を養う上で欠かせません。具体的な数値や変数を用いて式を構築し、問題を解決する能力が求められます。さらに、式を多様に見る力も重要です。数学的な表現は一つの式に限られるものではありません。同じ問題でも、複数の式で表現することができます。式を多角的に見ることで、問題の本質をより深く理解することができます。

岡田先生はまた、数学的な表現力を育成する上で大きな課題として「論証」を挙げています。論証とは、数学的な主張や結論を論理的に導き出すことです。数学は論理的な思考が求められる学問であり、論証を行う能力は数学的な表現力を高めるために欠かせません。数学的な表現力を身につけることは、数学のみならず他の科目や日常生活でも役立つスキルです。数学的な思考力を養い、論理的に考える力を身につけることで、問題解決能力や論理的な議論ができる力が身につきます。岡田先生の考えによれば、数学的な表現力を育成するためには、式を読む力、式で表す力、式を多様に見る力、そして論証の能力を養うことが重要です。これらの力をバランスよく育てることで、数学的な表現力を高めることができます。数学の世界において、より深く理解し、表現する力を身につけることは、数学への興味や学習意欲を高めることにもつながります。

 

子どもたちのためにできることを考える

 私たちの多くは、算数、数学は言語学習とはかけ離れた存在であると考えていますが、算数、数学も言語のひとつだと私は考えています。つまり、算数、数学の学力が伸びているということは、言語力=表現力も伸びていると。しかし、学習教育、現場において、その実感は皆無に等しい状況がつづいているといえます。
その理由は「式を読む力」「式で表す力」「式を多様に見る力」の育成で学習が止まっているからです。そして、「論証」を学習することが体系化(カリキュラム化)されていないからです。
こういった状況を打開すべく、学校においては、反転授業を導入することにより、「論証」を学習できる時間をつくり出そうと考えています。ただ、「論証」を体系化し学習指導するには、核となる教科書、教材が必要です。(文/学林舎 北岡)