2018.06.16

【GAKURINSHA TOPICS】
学習指導要領改訂によって教科書どう変わる? -社会編

 新学習指導要領では、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱の目標が掲げられています。これらの目標のもとに改訂された、社会の新しい指導要領について、具体的な内容を整理します。

【社会】

次に、小学校、中学校の社会科における目標と内容を整理します。

1.目標
「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力・人間性等」を養成するために、社会科では、以下の内容が目標に追加されました。

「知識・技能」
・資料や調査活動を通じて情報を適切に調べ、まとめる技能。

「思考力・判断力・表現力等」
・社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力。
・考えたことや選択・判断したことを適切に表現する(説明したり、それらをもとに議論したりする)力。

「学びに向かう力・人間性等」
・よりよい社会のために、主体的に問題を解決しようとする態度。

これらの目標にもとづき、社会科の内容がどのように変わるのかを読み解きます。

2.内容
(1)小学校

 小学校においては、現行の学習指導要領で小学3年生と小学4年生の内容をまとめて扱いましたが、新学習指導要領より、各学年に分けて記載するようになりました。各学年の学習内容がどのように変化するのか、詳細に説明します。

①小学3年生
 小学3年生における学習単元に、地域の安全を守る働きが加わり、身近な地域や市町村の様子、地域の生産や販売の仕事とともに、地域社会についての学習としてまとめられました。人々の生活の変化について学ぶ単元には、時間の経過にともなう市の様子の変化についての内容が追加されています。また、公共機関の学習とともに、租税の役割について学習し、人口について触れる際には、少子高齢化や国際化についても学習するようになります。さらに、小学3年生から地図帳を活用した学習が始まります。地図帳では、身近な地域だけでなく、都道府県や外国についても調べるようになります。

②小学4年生
 現行の県(都、道、府)の様子についての単元が、都道府県の地理的環境や名称、位置に関する単元と、県内の特色ある地域に関する単元に区分されました。また、県内の特色ある地域には、国際交流に取り組んでいる地域についての学習が追加されています。自然災害について学習する単元が、現行の学習指導要領の地域社会における災害および事故の防止についての単元から独立して取り上げられ、自然災害への対処や備えについても学習するようになります。文化財や年中行事についての単元は、地域の発展に尽くした先人の働きの単元とともに小学4年生に配当されました。地域の発展に尽くした先人の働きの具体例には、「開発、教育、文化、産業」の分野に、「医療」が新たに加わっています。

③小学5年生
 小学5年生では、まず我が国の国土の単元において、竹島や北方領土の問題や、尖閣諸島には領土問題は存在しないことが明記されました。我が国の産業と情報の関わりの単元では、情報や情報技術を活用して発展している産業の具体例が、「教育、医療、福祉、防災」から、「販売、運輸、観光、医療、福祉」に変更となっています。

④小学6年生
学習する単元の順番が、公民、歴史、国際社会に変更されています。歴史の単元においては、当時の世界との関わりにも目を向け、我が国の歴史を広い視点から捉えるという内容が追加されています。

(2)中学校
中学校においては、地理、歴史、公民の分野別に考察を行います。

①地理的分野
 地理的分野では、「世界と様々な地域」と「日本の様々な地域」の2単元構成でしたが、「世界と日本の地域構成」を加えた3単元構成に変更となりました。それにともない、我が国の国土や時差についての計算を、地理分野の冒頭で学ぶようになっています。また、日本の地域構成を学習する際には、竹島と北方領土について取り上げ、尖閣諸島には領土問題は存在しないことが明記されました。

②歴史的分野
 歴史的分野では、歴史的な事象について理解させるだけでなく、歴史的な事象の意味や意義、伝統と文化の特色などを多面的・多角的に考察し、説明・議論する力を養うことが重視されています。

③公民的分野
 現代社会の情報化については、人工知能による産業や社会の変化や、災害時における防災情報の発信について取り上げることが追加されました。経済においては、起業について取り上げ、経済活動や起業などを支える金融などの働きを取り扱うことや、労働保護立法についての内容が加わっています。

 社会科では、新学習指導要領において、学習する学年の変更や新たに追加される内容などが見られました。また「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力等」の柱にもとづいて、地図や資料を読み取り、活用し、それらを表現する能力も求められています。このような変更により、教科書がどのような内容になるのか、今後注目していくべきです。(文/学林舎編集部)